2025/01/07その他

『「鳥の目」と「虫の目」 + 「魚の目」』

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『「鳥の目」と「虫の目」 + 「魚の目」』

CISO事業部 中村 和之

社会を観察する方法として、昔から「鳥の目」と「虫の目」というものがあります。鳥の目は空の高みから広く俯瞰する方法で、虫の目は地べたをはい回りながら一つ一つをきめ細かく確認するという観察方法です。私としては、提案や問題・課題の洗い出しやアプローチにも十分通じる話だと日々実感しています。ただし、最近+「魚の目」の重要さに気づきがあった今日この頃です。魚の目は、世の中のトレンドや日々の状況変化を感じ取る視点のことです。この基本的な手法・古人の知恵を改めてビジネスに活かせないかと考え、記事として纏めておきたいと思った次第です。


コンサル用語でいう所のMECE(抜け漏れなくダブりなく)的なアプローチおよび整理の進め方を、「鳥の目」および「虫の目」、すなわち、物事の見方における俯瞰および複眼を上手く切り替えることで、ビジネスに活かせると考えています。
「しかし、最近思うのはコンサル向け必須スキルとお道具箱的なフレームワークの数々を信望するあまり画一的な答えしかだせなくなってきているように思えてなりません。顧客からすると見飽きた答えにみえるのかもしれません。サビ抜きのお鮨のようなものかもしれません。
また、情報が多すぎるがゆえに"既視感"に苛まれる顧客担当者の方々が増えている昨今、問題・課題の設定レベルも高くなっているように思えます。エンゲストロームが提唱する学習のプロセスでは、Step1で"問題と既有知識や経験との間で生じるコンフリクト(動機付け)" により深い洞察を持った問題定義が可能となるとされています。コンフリクトをより幅広に、深くできるかは内化の自己学習や経験の程度によるため、ここで私見を述べると「一に経験、二に経験」といったところでしょうか。

動機付け - 方向づけ - 内化 - 外化 - 批評 - コントロール

①動機付け 問題と既有知識や経験との間で生じるコンフリクトを定義する

②方向づけ コンフリクトの解決を目指して学習活動を始める

③内化 解決へ向けて必要な知識を習得する

④外化 習得した知識を実際に適用してコンフリクトの解決を試みる

⑤批評 適用の段階で都度限界に応じた再構築を行う

⑥コントロール 一連のプロセスを振り返り、必要な修正を行いつつ次へ向かう

1.学習サイクルの6つのステップ
出所:松下 佳代 著「ディープ・アクティブラーニング」を基に作成(2015120日 初版発行)

 

何が足りないのか?何が多かったのか?日々全体を俯瞰して考える中で一つ「ひらめき!!」があったのが「+魚の目」の考えでした。いわば、独自性を加味した答えを出すためのスパイスとして、世の中のメガトレンドや日々の状況変化を感じ取り、それに対する深い洞察を加える事かもしれません。
「魚の目」を取り入れることで、顧客に対して"際立つ"オリジナリティがあり、タイムリーな問題・課題のあぶり出しや対応策の提示、さらに顧客視点に立った顧客の情事(気持ち)を汲み取ることができます。すなわち、独りよがりではなく、寄り添う提案が可能になるということです。そして、「魚の目」の考えを取り入れた結果が、昨今ビジネスにおいて強く求められる遺漏のない対策案に繋がるのだと考えています。 

ここで、アカデミックな分類を交えて整理してみます。
日々向き合う問題は、大きく分けて以下の2通りの分類できます。 

「技術的課題」

 十分に対処できるもの、必要なノウハウや手順が揃っているもの

「適応課題」

 裏付けのある専門知識や標準的な手順を使ってもなお歯が立たない問題

出所:ロナルド・A・ハイフェッツ/ローティ・リンスキー 著「最難関のリーダーシップ」を基に作成(2018103日 第1刷発行)

 

本稿でフォーカスしたいのは、後者の「適応課題」になります。つまり、今まで述べてきた「+魚の目」が重要な要素となります。何故かというと、現状を幅広く分析し世の中の動向を観察しつつ、顧客の立場に立つことにより「適応課題」へアプローチするための"ヒント"が深い洞察から得られるからです。その"ヒント"を頼りに顧客が見据えるGoalから現状を比較することで問題を浮き彫りにして、問題への対処を課題として整理・纏めることで十分、オリジナリティのある"際立った"提案が出来ると考えます。そして、"問題を抱えている人"に取り組んでもらえるよう当事者意識を持ってもらい、行動に移すことが出来るようになります。
昨今のビジネス状況の移り変わりとして、シン・ロジカルシンキングという考え方が出てきています。それは、「頭での理解」:十分な要素が期待されている順番で示されているか?を示す"論理"と「心の共感」:自分の立場と関係があるか?自分の悩み・期待に応えてくれるか?を示す"情理"の双方についての必要性を問うものです。二つの要素が合わさって初めて相手は"腹落ち"するのだと説く理論になります。シン・ロジカルシンキングの中では"レリヴァンス(Relevance:関連度合い)"言い換えれば、自己満足の論理ではなく、相手への"情理"を配慮するということです。"情理"の要素を組み込めて、初めて相手の要求を満たし、悩みを解消し、期待を超えていけるメッセージを選び取る力を発揮できるようになります。

【プロフィール】

中村 和之(なかむら かずゆき)

 2024年にデジタルアーツコンサルティング株式会社(DAC
 ※2024/4よりアイディルートコンサルティング株式会社(IDR-C)へ社名変更

ヒューレットパッカード、パロアルトネットワークスを経て、ITインフラ・サイバーセキュリティの分野においてコンサルタントとして活動。最近では、多岐に渡るセキュリティ製品を顧客要件に応じて適切に組み合わせる知験作りにフォーカスした活動に注力しています。

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